『あゆいまつ』探索

         探索者 : 大滝会員  木村義吉幹事 、 伊藤弘治幹事(ご報告者)
         探索日 : 平成19(2007)年 7月 5日



 『あゆいまつ』とは、「 脚結待つ 」と書き、語源は上代(かみよ)の時代、男子が外出や正装のとき、袴の上を膝下あたりで紐(ひも)結ぶ事から来ています
…埴輪人形でズボンのようなものを膝下で紐で結んでいるのを見たことが有る
と思います---あれです。
 その後も天子(天皇)に仕える宮人の間では、連綿と「 脚結 」または「足結」の服装が使われ続けた事実が残っています。
 古事記に 【宮人の 足結(あゆい)の小鈴 落ちにきと 宮人響(とよ)む 里人もゆめ】 と、詠まれています。
宮人の間ではこの「足結」の紐に鈴などを下げて居たことが詩から判ります。
また万葉集や古今和歌集にも「 脚結 」または「足結」の言葉が見られるそうです。
  皇族の間では、「 脚結 」または「足結」の言葉は普通に使われていた言葉であり、当然のこと明治天皇もご存知だったはずです。

 今では、落石など危険な断崖等の有る道を指す言葉に変化しています。…危険な場所に差し掛かったら、慌てずに、服装を整えながら暫し待つと言った
意味合いになります。

この万世大路の【あゆいまつ】は明治天皇の命名と言い伝えられています(大滝会:伊藤弘治氏談)

下記は私(ホームページ管理人)の勝手な推測です(念のためおことわりしておきます)・・・・。
  万世大路の通り染めに臨み、此処を通った明治天皇ご一行が【あゆいまつ】にさしかかった時、崖の崩落跡がひどいため、
明治天皇が随行責任者の参議大隈重信に 『大隈、ここは危険につき、暫し脚結待つ事としようぞ・・・』 など
と言い、それが言い伝えられこの地の名称に変化
したものと推測されます。

 
平成27年に鹿摩貞男様の調査により、明治時代の絵師 濱崎木麟の手による「栗子新道画図」の中に胡桃平村(大滝)の近く(「あゆいまつ」とほぼ同位置)に
「相生松(あいおいまつ)」
の記述が有るのが発見されました。
 絵図が書かれたのは万世大路開通前の明治14年9月(開通は10月)であり、未だご通輦されていない明治天皇による命名は考え難いように思われ、
元々は「あいおいまつ」が正式な地名で、後年なまって「あゆいまつ」になり、さらに大滝伝承の中で明治天皇命名説が生まれた可能性も出てきました。
絵図を観ると「相生松」標記の下には、一本の幹から二つの枝が伸びた(これを相生という) 松の巨木が描かれています。
相生松の地名はこの松の巨木に由来するものと想われます。
 明治天皇もご巡幸のおり、この見事な松の姿に歩みを止め(あゆい) しばし(まつ) ご覧になったのかもしれません。
昭和年代には元々地盤のゆるい土地がらのせいか、既にこの「相生松」は無くなっており、「あゆいまつ」伝説だけが語り継がれ今に残ったようです。

    
濱崎木麟 「栗子新道画図」明治14年9月 ---- まだ飯坂が「飯坂村」と表記されており飯坂の町制施行(明治22年)以前に書かれた絵図であることが解かります。
    
絵図(鳥瞰図)提供 : 鹿摩貞男様 (福島市役所々蔵を撮影)


未だ当時(明治14年)の絵図面には大滝も葭沢も地名表記が無く、在るのは胡桃平村だけです。

大平〜胡桃平部分の拡大図 --- 万世大路開通時の公式記録に 「大滝には2、3棟の室屋(旅籠)が有るのみで---云々」 と有る通り胡桃平村には僅かの家の印しかない。
 

下の絵図は真に不謹慎ながら、上の絵図の小川の流れに筆者(紺野)が着色し少し手を加えてみました。
葭沢付近の川の流れがおかしいものの胡桃橋・大滝橋・葭沢橋、等も書かれていることが判るかと思います。
・・・・絵を描くために万世大路を初めて訪れたであろう木麟にとってはこの程度の間違いは当然のことと思われます。

  


余談が長くなりましたが、以下伊藤弘治様からのご報告です。

伊藤さんからのコメント
 場所は、旧道を西川橋より、米沢方面に行くと、「かっちなし(勝地梨)」(今の大滝第二トンネルの下)よりカーブを曲
がり、少し
行くと危険な道路に出ます。その場所が「あゆいまつ」です。
上を見ると、草木もなく、崖です。下はやはり草木もなく、川まで崖です。子供のころ、上から石が落ちてくるので急い
で通リました。
しかし、人や車が通らなくなり30年が経過し、自然に還り樹木が繁茂している今、あらためて行ってみると当時の危
険な場所のイメージは無くなっていました。

大滝の蝦夷紫陽花(エゾアジサイ)
あまり綺麗なので一番初めの画像にしました。…「あゆいまつ」へ行く途中に有ったそうです。


急傾斜でミズナ採りをする木村さん
斜面には山菜のミズナ(正式名 : ウワバミソウ)が群生しています。


花が終わった 歯っ欠け花 (正式名 : ショウジョウバカマ)


歯っ欠け花(左)と、オウレン(黄蓮・右)


オウレン(黄蓮) 
オウレンの黄色い根は、言わずと知れた胃腸薬です。




これより 『あゆいまつ』 へ向かう
入口


広い道


両側から木が被さり道が暗い


木村さん が隠れる位 草木が繁茂しています。


道横の崖 (風化が進み非常に脆くなっているようだ)


自然倒木




道なき道を進む (木村義吉さん)


道の横 (松林)


笹藪をかき分けて進む


明るい場所に出ました…渡辺正義さん所有林の松の木と栗の木


『 あゆいまつ 』土石が崩れ落ちてこんな大きな石が現れています。
この下が道になります・・・岩や土質が脆く落石が絶えず危険な場所でした。






木の根が岩を抱え込んでいます。






何本も巻いたツルと、岩の間から育っている木


倒れた松の木の直下の道が万世大路です。
昔はこの道をトラックやバスが通っていました。


伊藤弘治さん




道の中央


道の中央


松の木が斜めに育っています。・・・倒れかけ?


蝦夷紫陽花


蝦夷紫陽花




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